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 令和7年度 卒業研究 各賞受賞者
卒業研究は、論文や制作(映像作品、音響作品、脚本、朗読発表、アナウンス、ルポルタージュ)あるいは各ゼミナールで設定している研究成果物を2年間かけて完成させ、提出します。いずれの成果物も、専門分野の実習を主軸とする放送学科における学習の集大成として位置づけられるものです。
審査の結果、今年度の受賞者が下記の通り決定しましたので、ここに発表いたします。


芸術学部長賞

論文『移住PR動画の表象から考える自治体広報の課題と限界』
仁科ゆう
 地方自治体によって制作される「移住PR動画」はどこまで効果があるのだろうか。その内容や表象を分析してみるとそのほとんどが映像表現から構成、内容にいたるまで、まるで同じであることを発見。表象を分析しても、移住を決断させる効果があるかは疑問である。
 なぜこのようなことになったのか、映像が作られてきた背景などを調査。ふるさと創生の政策と仕組みが、地域の特性とは関連しない「都会ではないことのすばらしさ」を描くという「正解」に集中してしまうことを見つけだした。
 また移住者の声も踏まえながら移住問題の基本を問い直し、今後のPR映像制作への提言も含むとても深い研究論文。
【評】指導担当:兼高聖雄


映像作品『戦場の舞台裏』
新沼希彗 黒田蓮 成田昂平 中川春喜 野崎義光
 本作は、毎年7月に新潟県苗場リゾートで開催されるFUJI ROCK FESTIVALに出店する、スリランカ料理屋台を密着取材したドキュメンタリーである。
 前夜祭を含めて四日間、早朝から翌朝までほぼ休むことなく撮影を継続し、現場で発生するトラブルの瞬間をカメラで的確に捉えている点が高く評価できる。また、音楽フェスティバルという、周囲の音が聞き取りにくい騒音下で聞こえてきたサンボマスターの楽曲を効果的に取り込み、ORIGINAL LOVEの「接吻」をエンディングへと自然に繋げていくなど、編集・MA技術にも大変優れている。
 半年以上前から準備を進め、長期的な準備と計画性が結実した、完成度の高い秀作である。
【評】指導担当:安部 裕


映像作品『私の見ている世界』
塩屋麻菜 粕谷基 久和野早紀
 精神疾患の一つである統合失調症の患者さんたちが見ている世界を可視化しようという難しいテーマに挑んだ作品。その制作過程で専門医、元・現患者、支援団体、新聞記者などなどへ様々な角度で丁寧に取材を試み、多くの視聴者にとって、とても分かりやすく、心に響く作品に仕上げています。こうした制作姿勢自体が、放送作品として最も大切な条件を十分満たしていることを、まず評価したいです。
 中でも圧巻は、現在も統合失調症に苦しむ患者さんへのインタビュー。カメラの前で人格が変わる様子を収めています。これはプロの制作者たちでも簡単には収めることの出来ないであろう、貴重なシーンです。
 さらにナレーターに、交渉すること自体難しい人気俳優の上白石萌音さんを起用。作品を彩り豊かに演出している点も高く評価したいと思います。
【評】指導担当:小林 偉


音響作品『ニンゲン』
田中咲希 名倉小遥
 売れない芸人・順平とAIアンドロイド・イトーが漫才コンビを組み、「笑い」と「人間らしさ」の真髄を問い直すラジオドラマです。
 AIと人間が共に舞台に立つという現代的な着想を、声のみで想像力を喚起させるラジオならではの特性を活かして描いた点、制作者自身が技術革新の時代を生きるなかで感じる葛藤を作品に込めた点が高く評価されました。
 キャラクターを的確に捉えたキャストの芝居や、遊び心に溢れた音響設計、細部まで計算された効果音や音楽、台詞のモンタージュが、コミカルさとシリアスさが交錯する物語に心地よいリズムを生み出しています。聴き手を自然に物語へ引き込む魅力を備えた、親しみやすくも深い哲学を湛えた意欲作です。
【評】指導担当:茅原良平


脚本『in the 盆地 town』
安孫子知世
 いわゆる田舎の進学校に通う受験生の友情とそれぞれの進路選択への戸惑いを描く作品である。高校3年生の夏から受験へと向かう時期の揺れる心情を、みずみずしい会話と確かな構成力によって描き出している。大きな事件は起こらず日々の情景と心情を丹念につづる。登場人物同士の関係性と日常の断片を積み重ねることでドラマが立ち上がっており、そこに作者の観察力と人物描写の深さが見てとれる。大学生にとって、高校時代を描くことは、自身の経験との距離が近いことから容易ではない。しかし、本作品の人物像や思春期の停滞感、将来への思い、進学校の空気感には、距離が近いからこその生々しさと確かな普遍性がある。
【評】指導担当:中町綾子



芸術学部奨励賞

映像作品『ミックスルーツ〜はざまで生きる〜』
纐纈栄美子
 本作は、自らの出自を基に、同じ悩みを抱える人々を丹念に取材した秀作である。
 制作者・纐纈は、ナイジェリア出身の父と日本出身の母をもつミックスルーツで、日本で生まれ育ち、自らを日本人と認識してきた。しかし小学3年頃から周囲の視線に違和感を覚え、悩み苦しみながら生きてきた。本作では、同じ状況下にある多くのミックスルーツの方たちへのインタビューを通して、自身の悩みを共有し昇華しようと試みている。
 褒め言葉に聞こえるが当事者を傷つける「マイクロアグレッション」という現象についても丁寧に描いており、観る者に自己省察を促す。自らと向き合い、闘った姿勢も素晴らしく、高く評価できる優秀作である。
【評】指導担当:安部 裕



芸術学部呉正恭賞

映像作品『三瀬稜史~音がない世界で夢を追う~』
橋本光騎
 昨年、日本で初めて開催された耳の不自由な方たちによるスポーツの祭典=デフリンピック。その大舞台への出場を目指したデフバスケットボール・三瀬稜史選手を、1年近くに渡り密着取材したドキュメンタリー。地上波TV局が積極的に扱わなかったこの大会の舞台裏を、一部でも収めたというだけで貴重です。
 生まれつき耳が不自由な三瀬選手への取材は、インタビューすることさえ難しい中、手話通訳、筆談などを駆使し、都内各所・大阪・佐賀など様々な場所で敢行。その各々で三瀬選手の姿を多面的に切り取り、それを視聴者に対し、分かりやすく、かつ効率よく編集している点は高く評価したいと思います。
 また、作品の音楽制作を他大学の学生に依頼し収録、オリジナリティに拘ったことも演出者としての矜持を感じました。斬新な創作領域への開拓を試みた、優秀かつ独創的な作品に与えられる呉正恭賞に相応しい、見応えのあるスポーツ・ドキュメントです。
【評】指導担当:小林 偉



放送学科特別賞

論文『二次的継承の時代のテレビの戦争表象 ―NHK国内放送とNHK WORLD-JAPANとの比較から―』
大野充輝
 2025年は、戦後八十年。そこではどのような番組が放送されたのか。特に公共放送であるNHKは、国内(地上波・衛星波放送)、海外(NHKワールドJAPAN)にむけどのような放送を行なったのか。その内容や表象を読み解き、歴史的観点から分析。
 先行する研究で指摘されていた戦争被害への偏りにくわえ、戦争経験者のいない「継承の時代」へと変化する様子をとらえ、その内容が「唯一の戦争被爆国」である日本の立場の確認と、それに基づいて国内には「当事者意識」の醸成、海外に向けては「日本による継承の重要性」の明確化がなされつつあることを独自に確認。
 丹念な分析で日本の八月ジャーナリズムの今後の姿を描き出した研究。
【評】指導担当:兼高聖雄